11.貨幣評価の恐ろしさ(2002/7/10)
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 7/10(水) 11:31:18  返信も含め全削除
 実行予算制度は、前述したように材料費と加工費を明確に区別しないための問題も多いが、実行予算の金額管理には更に多くの問題を抱えている。近代経営時代の係数管理の多くは金額管理である。それは人類が「貨幣評価」という経営情報の共通言語を手にしたためである。
 原始時代に物々交換する時は価値の等価が重要となるが、価値の等価に金額概念が導入されると価値観の一致が鮮明になるのである。交換経済時代から貨幣経済時代に移行する段階で貨幣評価の価値観が生まれ、現代の貨幣評価全盛時代に入ったのである。これを貨幣評価の公準といって経営情報の収集・分類・分析・評価・管理等のすべてを貨幣評価で表示するようになったのである。しかし、貨幣評価の公準には大きな落し穴があって、その影響を受けているのである。貨幣というモノサシは変動する欠陥をもっている。モノサシの変動とは、インフレやデフレの現象である。
 購入した材料\1,000が現在の相場\1,500に値上がりか、\500に値下がりした場合、この材料を使用した現場の原価は、\1,000であるか、\1,500或いは\500であるかを考えを整理することは大変難しい。なぜなら、\1,000で購入したのであるから原価は\1,000であると主張する。これに対して現在の再取得価格は\1,500或いは\500であるから、原価は\1,500か\500であると主張する場合がある。この論争はどちらが正しいかの問題ではなく、これらの情報をどう判断し経営に活用するかが問題なのである。この二つの情報や考え方はいずれも真実である。真実が二つ存在しているのである。このようにモノサシに揺らぎが起きると経営の道具は混乱する。我々が通常用いている金額という共通言語は、このように不安定で恐ろしい内容を抱えている道具なのである。したがって、金額というモノサシを利用する場合は、貨幣価値が一定であることを前提に利用しているのである。これを貨幣価値一定の公準という。近年の時価会計や減損会計の問題である。
 実行予算制度は貨幣評価を前提にしており、注意しなければならない点が多いことを認識すべきである。利益率の高い時代はラフな金額管理で機能したが、厳しい時代にはラフな実行予算が通用するはずがないことを留意しなければならない。(阿座上洋吉)

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