175.税法の立法主旨と経営戦略
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 9/28(水) 10:34:10  返信も含め全削除

1.法定耐用年数の思想
 減価償却費の計算は、初期投資された機材(機械や車両運搬具等)の費用を使用可能年数(耐用年数)に配分することが目的である。しかし耐用年数を決定することは非常に厄介である。なぜなら機材を大事に扱い長期にわたり使用する企業もあれば、乱雑に扱い使用年数を短くする企業もある。この機材の耐用年数を購入時に企業自ら裁量で予測し決定することは不可能に近い。しかし、使用可能年数を初期段階で決定しなければ、減価償却費の計算ができない。ではどうして関係者が合意できる耐用年数を決定すべきであろうか。これは第三者の的機関が統計的に見出す以外に方法がない。幸い税務当局は、実務界で行われている全国の実績データがあり、機材別に全国平均の耐用年数を割り出すことができる。これらの耐用年数を詳細に分類し成文化したものが法定耐用年数である。更に納税者の税負担の計算に不公平が生じない配慮が必要であるから、法定耐用年数は重要な役割を果たしている。これを税の理念である税の公平負担の原則という。

2.戦略的減価償却の思想
 これに対して、企業の経営戦略として減価償却費の計算は別の視点が要求される。法定耐用年数が10年と規定された機材が日進月歩で進化している場合、競争相手が2年後に進化した機材で市場に参入することが予測される場合がある。この場合、物理的な耐用年数は10年であっても機能的耐用年数は2年となってしまう。ここに法定耐用年数と経営判断による機能的耐用年数にズレが生ずるのである。この場合は、企業戦略上2年で償却しても採算点を見出して、企業として生き残りの決断をしなければならない。企業としては2年で償却すれば、税法に抵触し10年で償却した場合の減価償却費の差額は、損金として認められない。そこで申告書上で利益に加算し税金は公平負担の原則に従って納税する。これを有税償却という。また反対の行為として法定耐用年数より延長する考え方もあり、企業として機材を大事に扱う思想を企業内で徹底し、耐用年数延長させて各期の費用軽減により大きな成果を挙げて成功している企業もある。費用発生の不安定さがここにも存在する。

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