220.江戸時代から続いた工事管理と決別する
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 06/8/16(水) 09:13:07  返信も含め全削除

1.江戸時代から続いた工事管理の思想
 江戸時代から高度経済成長前夜までの日本経済の特色は、人件費の安さであった。更にサービス残業や無償の行為も日常的なことであった。したがって今日のように人件費が高い時代とは異なり、原価管理上も人件費管理については無関心であった。当時は物に価値があり物を大事にした時代であり、総原価の中に占められる原価の割合も、建材という物にウエイトがかかっていた時代であった。したがって、当時の原価管理の考え方は、物管理といっても過言ではない。物管理時代は建材の予算管理が中心となっていた。実行予算制度は物管理の思想が受け継がれている。建材であれば予算を確定してから購入の管理をすることが可能であり、予算管理に最も馴染むものである。しかし今日のように人件費やレンタル料のように、施工時間に比例して発生するものは、予算で管理できないものであり、江戸時代から続いた金額管理から、施工時間管理に切り替えが必要になったのである。

2.暖簾(のれん)分けの文化として継承されたもの
 十分か経験によって磨かれた技術者が、親方から独立して一本立ちする前の経営者の経験として、予算を与えられ独立採算の経験をさせたものが、現在の代理人制度に近いものであった。当時、帳場という職種があったが、帳場とは帳簿を付ける場所と言う意味であるが、帳簿を付ける人を「帳場さん」ともいい、後に「帳場」と言われ、財務管理をする人という意味に用いられていた。したがって、独立する前に経営者としての大工技術と、帳場を体験させることが当時の慣わしであった。体験させるための工事であるから小さい工事で、実行予算的なものは頭の中で十分機能したであろう。いずれにしても、一本立ちする前のテストでもあり、本人としては施工技術や帳場も真剣に取り組んだに相違ない。しかし、今日の建設業界では、このような独立するための体験として実行予算制度を使うわけではない。江戸時代からの因習から抜け出さなければならない。近代的工事管理として実行予算は機能しないのである。

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