251.日本の労働市場の変化と格差社会の背景
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 07/3/21(水) 12:30:40  返信も含め全削除

1.日本の市場経済の行方
 日本の市場経済は、依然として強い過去の社会主義的経営の因習が根強く残っている。終身雇用を前提とした年功型の賃金制度がその典型である。この制度は決して悪い面ばかりではなく、むしろ良い面が多いとも言われている。働く者にとっても将来設計が容易にできたし、生活の安定等、精神的に落ち着いた状況で仕事ができる点は、能力主義という労働の市場経済化の仕組みよりも優れていると評価されている。特に社会学的視点で見れば、企業内には所得格差の少ない環境が作れる点でも優れている。更に家族手当や住宅手当、通勤手当等社会保障的な制度で良質な生活環境を守れる制度があり、日本的な能力主義に移行した企業であっても、社会主義的仕組みを継続させて能力主義へ移行しており、日本は本格的市場経済型の能力主義には中々移行することができなかった。それが近年になって、本格的市場経済型の労働市場の仕組みが進んできた。それには大きな時代背景の変化があり、日本のビジネス界にも社会環境の変化が大きく影響してきた。

2.労働市場の二重構造化
 従来の日本の労働環境は、正社員族と非正社員族の二重構造化はあまり感じなかった。それが近年になってこの点が大きく変化してきた。大企業の中でも、正社員と下請企業の社員と混在化し、下請企業の中も正社員と契約社員や派遣社員、パート、アルバイト等が混在して働いている。このような現場の作業状態自体は問題ではないが、大企業の正社員、下請の正社員、非正社員が同一の仕事でありながら、賃金だけが大きく格差があることが問題となっている。これは不公平の問題であり、速やかに解決しなければならない課題である。市場経済は、社会主義圏の経済活動と違い常に競争にさらされ、生産の波が大きく変動するため、人材を固定化すること自体が難しい。そのため労働市場は必然的に生産調整型に移行せざるを得ない状況下に追い込まれてしまう。日本の市場経済も世界と完全に連動して変動するため、過去の日本の高度経済成長期のような、規制によって国別に孤立した時代の労働市場を守れなくなってきたのである。

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