350.見積原価計算の諸事情
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 09/7/8(水) 00:05:10  返信も含め全削除

1.伝統的原価計算の生い立ち
 市場経済が進む中で商品生産における総合原価計算は、事務系の仕事として発展してきたものであるが、造船業や建設業のような注文生産業界においては、技術系の人材が生産全般に関与するため、原価計算にも深く関与することになるのである。注文生産業界は、受注の段階で施主である発注者を価格について説得することが重要であり、発注者説得型の原価計算が要求されるのである。発注者に提出する見積書作成のための原価計算であり、これを見積原価計算という。

2.見積原価計算の昨今の事情
 見積原価計算は、主として技術者によって積算される場合が多く、事務系のものが携わることは稀である。その理由は、発注者が求めている生産物がオリジナルなものであり、過去の生産物と同一の生産物はない。これを技術的な技法によって見積計算をしなければならないのである。そのため少しでも類似の生産をした経験者でなければ、見積額を算定することは困難である。多少でも類似の技術的積算の経験が重要となるのである。このような事情から注文生産の見積原価計算は、技術者が中心となって計算されることが多かったのである。しかし近年になって、事務系の営業マンが見積計算をする場合も多く見られるようになってきた。これは歩係や歩係単価の標準化が進み、適切な見積積算ソフトができたことも、見積計算が容易に計算できるようになった要因である。

3.発注者による予定価額の計算
 発注者による予定価額の計算も見積原価計算の一種であるが、施工業者が行う見積原価計算と発注者が行う予定金額算定のための見積原価計算とは、基本的に大きな違いがある。発注者は、これから発注するオリジナルな生産物を、入札前にどの程度の原価であるかを見定めなければならない。この適正原価の見積原価計算を予定原価計算という。注文生産は、オリジナルな生産物をつくるのであるから、当該用の原価計算が必要であるが、実際には、類似の生産物の実態原価から統計的に歩係や歩係単価を導き出し、これらに工事量を乗じて予定価額を積算する方法が採られるのである。その点では生産者が作成する見積原価計算と類似しているのであるが、基本的思想的には相違があるのである。

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