<7>原価計算は危険な道具(その2)
新規投稿者 地域経済研究所・阿座上洋吉  投稿日 8/18(日) 11:42:13  返信も含め全削除
1.原価計算の課題は固定費に集中する
 前回に記述したように原価計算の課題は、固定費の問題に集中する。固定費は、仕事の有無に関係なく発生する費用であるから、常傭の従業員の人件費は現場系であろうが営業系、事務系であろうが、すべて固定費の性格をもっている。したがって施工現場がなくとも技術者の人件費は固定費として発生する。しかし現場が休業状態の場合、技術者の人件費は負担させる現場が存在しない。この待機状態の人件費をどう処理するかは、経営者・管理者・担当者によって処理が一定しないし、担当者の知識レベルによっても相違する。このように原価の本質を見極めないで原価計算をすると常に不安定な要素が付きまとうのである。しかし、いずれも原価計算上の手法として認められているのである。この点が原価計算はカメレオンの如しと言われるゆえんである。

2.技術者給与の具体的配分法
  上記の休業状態にある技術者の人件費を、原価計算の具体的処理法を整理すると次のように 各種の処理法がある。この問題は、技術者の人件費で解説しているが、これらの問題は、機械 費の処理等にも発生する課題であり、すべての原価に関係するものであり、人件費だけの問題 ではないことを留意すべきである。
(1)完全原価外処理法
  現場が休業状態でも常傭の人件費は発生する。しかし負担する現場が存在しないから、原価 計算制度上、原価から除外しなければならないとする考え方がある。この方法は、現場の原価 計算を正確に処理する考えが中心にあり、次の二つの処理方法がある。
a.完全な原価外処理法
  本格的に原価計算から除外すべきであるとする考え方で、発生した人件費は、負担する現場 が存在しないため、営業外費用の区分で処理する方法である。この場合休業状態が数ヶ月にお よび金額が多額に発生した場合は、特別損失の部で処理する場合も考えなければならない。
b.個別原価計算外処理法
  時の経過で発生した人件費であるが、負担する現場がないだけであるとし、現場別の原価か らは除外するが、現場担当者の問題で発生したものであるから、本社の管理部門の費用とは関 係ないとして、表示区分は原価項目の中で別項目により区分表示する。この場合全体原価の中 で表示するが、現場別個別原価計算には算入しない方法である。したがって、工事台帳には記 入しないため、現場別原価の負担にはならない。したがって、aの完全原価外処理法と同様に 現場別原価計算の算定は純粋化する。
(2)原価算入方処理法
  現場の技術者の人件費は現場の関連で発生するものであり、広義の現場の原価であるとした 考え方である。この考え方は、現場の技術者の人件費はもともと固定費としての性格であり、 この費用自体が原価であると考えるのである。この処理法にも次の二つの処理法がある。
a.直接原価算入法
  休業状態であっても現場担当者であるから、あらかじめ時間当りの負担額を高くして休業時 間の発生額を見込んで原価へ算入する方法である。
b.間接原価算入法
  当初の原価算入法は、@の原価外処理法を採用し、休業状態の人件費は工事間接費として集 計し、後日一定の配賦基準にしたがって全体の工事原価に配分する方法である。

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