<18>原価計算の概念を整理(その3)
新規投稿者 地域経済研究所・阿座上洋吉  投稿日 11/3(日) 07:50:37  返信も含め全削除
(6)仮設材の概念と工事管理
 仮設工事については、本体工事に比して補佐的工事であり存在感が薄い工事であるが、厳しい市場経済下においては仮設工事も軽々しく扱ってはいけない。仮設材の運用形態には、自社所有による仮設材の利用の場合とレンタルによる仮設材の利用の場合があり、原価管理の面では大きな違いがあり、両者は次のように分けて管理しなければならない。
@ レンタル仮設材の管理
 レンタル仮設材を利用する場合は、現場ごとのレンタル料は容易に把握できるため、原価計算上は問題がない。しかし原価管理の面ではレンタル料が利用時間に比例して発生するため、レンタル料は本体工事の施工期間に連動して発生する。そこで仮設材自体の管理よりも本体工事の施工時間管理に左右されるのである。したがって、本体工事の原価管理と連動させて管理しなければならない項目である。この仮設材の本格的時間管理については、本体工事の加工費の時間管理の手法と同一であり、詳細については後述するが原価管理の根幹に関連する重要な項目である。
A 自社所有の仮設材の管理
 仮設材を自社所有する場合は各種の処理法があるが、その処理法の選択によって原価の金額に大きな影響を与えるのである。近年の建設市場は益々厳しさを増す中で、自社所有の仮設材の管理も緻密さが要求される時代になってきた。仮設材の消耗額の計算については、すくい出し方式、利用回数方式、損料計算方式等があるが、各企業の管理能力に合った適切な処理法を採用すべきである。
a.すくい出し方式の管理
 仮設材を現場へ搬入した時点で、その仮設材の帳簿価額をその現場の原価へ算入し、仮設材を撤去する時点の仮設材の評価額を工事原価からすくい出して(控除して)消費高を算定する方法で「すく出し方式」という。この仮設材は大事に使用することによって高い評価金額ですくい出すことで、その現場の原価を軽減することがポイントである。
b.利用回数負担方式の管理
 仮設材の利用状況等を勘案し、経験的統計によって利用回数を算定し、1回分の消耗高を決定し現場の負担額を算定する方式である。この処理法は「すく出し方式」の評価額算定の難しさを解決するために考えられた手法で、消耗額算定額の簡便法とも言うべきものである。この手法は簡便であるだけでなく実用的であり、実務では広く利用されている。仮設材が破損した場合はその現場に全額負担させるが、再利用される回数が増えるほど工事原価が軽減されるのであるから再利用回数がポイントとなる。
c.損料計算方式の管理
 損料計算方式は、仮設材料の耐用年数を経験的推測によって算定し、固定資産の減価償却の計算法を利用して科学的に計算する方法である。この場合に税金の計算規定に振り回されてはいけない。原価管理は経営学上の思想で組み立てるのであって、租税理念からくる税の公平負担計算の思想には直接的には関係がないことを注意すべきである。あくまでも緻密な原価計算や原価管理に役立つことを狙いとするのであって、経営情報の正しい数値の算定を狙いとする理念を忘れてはいけない。

返信する

パスワード

一覧へ戻る】 ※最新の画面を表示するには再読み込みしてください.