<54>モラルの認識と知的財産の認識
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 2/22(日) 18:22:03  返信も含め全削除

1.近年の日本人の作業モラルと能力主義
 近年、日本の物づくりの信頼性が揺らいでいる。高度成長期のQC運動も低迷してきたし、コストの面からも競争力が低下してしまった。その要因は発展途上国への工場移転と共に技術移転も進み、結果的に産業空洞化が本格化し競争力が低下してきたことに起因している。これは地球規模で流動化した市場経済が作用した結果であり、競争力を失った産業界の地盤沈下は深刻なものである。併せて日本的経営の思想や手法が世界の市場経済のリズムに合わなくなってきた。いまだに日本的経営の終身雇用制を堅持し成果を上げている企業もあるが、数的には稀でありその中身も従来型の日本的経営とは相違し新しい手法に変化している。キャノンの終身雇用制は有名だが、賃金は年令型ではなく能力格差による賃金格差は2倍にも及んでおり、単純な日本的経営とは相違する。このように人材能力の適正評価こそが人材のモラルの高揚になっていることを十分に認識しなければならない。人材能力の適正評価をしなかった旧共産圏の国々の計画経済が破綻した要因はそこにあったのである。

2.モラルの低下を知的財産で補う
 企業における技術の研究には、優秀な人材が必要になることは当然であるが、日本における近年の不祥事の事件は人材の能力の低下から発生したものではなく、日本人のモラル低下の問題とされている。東海村の臨界事故、ロケット打ち上げ失敗、自動車会社のリコール隠蔽、食品加工事件等、日本人のモラル低下によるものが多いとされている。しかし人間が行う行為はミスがつきものでミスが起きない保証はない。人間は神様ではないのであるからミスはつきものである。しかしミスは最小限に抑えなければ成らない。ここに品質管理や危機管理等のマニュアル手法を有効に活用すべきである。人間のモラルに依存する従来型の管理システムでは十分に保全できないのである。この日本産業界の近年の不祥事をどのように克服するかが、日本社会にとって大きな課題となってきた。これらの事態を単純にモラルだけの問題として考えていることが間違いであり、今や品質管理や危機回避の問題は、ISOやマニュアル等のノウハウの蓄積が重要となってきた。これからはISOやマニュアル等の知的財産を十分に活用しなければならない時代がきたことを認識しなければならない。

3.日本の技術、技能の伝承文化
 日本人にはISOのようなマニュアルによって技術、技能を伝承させる文化はなく、活字によって技術の伝承は馴染まなかったのであろう。日本の職人芸として身についた匠の技は、決して本人から公開するものではなかったから、弟子達は長い時間をかけて親方の技術や技能を盗んで身につけなければならなかった。これが日本の技術技能の伝承文化であってマニュアルによって伝承させる文化はないのである。日本の伝統的技術技能を伝承させるシステムは、長い時間をかけて伝承する奥の深い方法で今日に至っており、多民族の中で考案された簡便なマニュアル伝承文化やISOの思想は、基本的に日本の職人気質に馴染まないのである。この点の伝承文化の違いがISOにも大きく影響している。しかし活字化した品質管理のISOやマニュアルが知的財産として益々進化しており、知的財産としての威力を出してきたことを注目すべきである。

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