<55>技術技能の日本的伝承法
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 2/29(日) 18:42:51  返信も含め全削除

1.日本的技術技能の蓄積とISOの手法
 宮大工の技術技能を標準化しISOの手法によって知的財産として後世に残す方法はないだろうか。日本人の伝統的な技術技能の伝承法として、マニュアルやISO等のように活字化して技術や技能を他者につたえる方法はなく、活字化したマニュアル等で管理することや支援する手法や考え方はない。もし宮大工に貴方の技術技能をISO馴染むようにマニュアル化してくれと要求したら一喝されるのが落ちであろう。何故なら、宮大工の技術や技能は、生産効率を追及するための技術ではないし、むしろ芸術的な作品を製作するための技術技能としてその道を極めたものである。自分で磨いた技術技能の真髄をマニュアル化して伝承する考え方は全くないのである。宮大工の弟子たちの賃金も安い時代であったから、時間をかけてスローテンポで伝承する方法が出来上がったのである。このような時代であるからこそ宮大工の技術技能がスローテンポ伝承法として機能したのであって、今日のように弟子たちの賃金も高く、更に技術革新のスピードが速い時代には、日本的なスローテンポの伝統的伝承システムでは機能しなくなったのである。激変社会に堪え得るシステムが必要になってきたのである。

2.隠し味と技術の承継システム
 日本の技術技能は磨き上げた当人の所有物という思想が強く、他人に積極的に伝える意思は希薄である。例えば調理人の隠し味とは、隠している味付けをいうのであり調理人から積極的に公開するものではないから、弟子達はこの隠し味の部分を盗むか、自分で工夫することしか方法がなかったのである。このような泥棒伝承システムともいうべきものは多くの技術伝承に見られる現象である。しかし伝承に時間がかかり効率のよい手法ではない。ビジネス社会の変化がスローテンポ時代の産物であるから、今日のようなテンポの速い時代では通用しないのである。近年、米国で開発されたレストランチェーン店方式は、標準化された調理法や味付け等すべてを規格化して効率をあげており、その手法やシステムが世界に広がっており成果を上げている。日本のような技術や技能は個人の所有物として承継する方法も必要であるが、大部分の技術技能はISOのようなシステムとして、企業の知的財産として蓄積すべきである。この技術技能を更に進化させたものが経営資源として企業力をつける時代になったのである。これからは知的財産の優劣によって企業格差ができるから、知的財産の進化に生き残こりかける時代がきたのである。

3.マニュアルに馴染まない日本人の弱点
 日本人にはマニュアル手法が馴染まないことは先に述べたが、新しい経営管理にはISOやマニュアルは欠かせない。何故ならマニュアルという知的財産の優劣が市場経済の勝敗を左右するからである。まさか幼稚なマニュアルが進化して知的財産として経営資源になるとは思いもしなかった。日本人は勤勉で有能な人材で勝てるという意識が強過ぎたのである。今や、知的財産となった経営の道具ISOは益々重要度を増してきた。個人の技量にだけに頼る時代から、作業の手順、工種の標準化等、規格から各種の作業等すべてをシステムとしてサポートするものが要求されている。そのため工程中心のISOが重要な知的財産として中核になりだしている

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