<62>作業標準化の難問を克服する
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 4/18(日) 22:51:23  返信も含め全削除

1.建設業界は意識の標準化に難問がある
 ISO導入時にその重要性を全社員に理解させることが重要である。特に品質管理システムの意思統一を徹底することが重要である。何故なら他の産業と大きく相違する点は、生産現場の環境の相違からくる意識に大きな課題がある。工場生産におけるISOの運用は、当事者が同じ生産現場で同じ意思をもって作業をすることが通常の生産行動であるが、建設業界の生産現場はひとつの現場で全社員が一斉に同じ作業や工事管理を経験することが出来ない業界である。そのため技術担当者が真の標準化を全社的に進めることが難しいのである。したがってすべての工事管理について他の現場技術者も自分と同じ方法で管理しているであろうと推測する程度であり、担当技術者個人の意識や裁量権にすべてを任せる方法である。そのため他の現場の工事管理の状況は想像でしか理解できない状況にある。これはISOに限った問題ではなく、すべての工事管理全般に通ずつ問題である。極端な言い方をすればすべての工事管理が担当技術者の腕にかかっているのであり、すべての責任を負わされているのが現場代理人制度である。建設業界の生産現場が工場生産のように作業標準化が難しい状況はこの点にあるのである。

2.品質管理の手法を社内で標準化することの難しさ
 工場生産の環境は、関係者が同じ場所において作業標準化等の検討があたり前であり、各種の作業を標準化することは全社員が何の疑問も感じない当然の行為として認識する。そのため工場では学習効果もあって作業の標準化や品質管理システムの進化にもスピードが上がり、軌道に乗せることは比較的容易である。しかし建設業界は工事管理全般についても意思統一すら満足にされていないため、各種の管理手法やISOを軌道に乗せることが容易ではない。また日本の伝統的な請負管理思想の残骸が残っており、その影響のせいで根の深いところに原因がある。宮大工の棟梁を想定してみると状況が分かるが、棟梁制度は工事管理のすべてを委任する制度で、ISOのような本社で全社統一の管理を想定していない。この棟梁制度時代の思想を現場代理人と名称変更したに過ぎないのであって、代理人の思想や手法の根底にある社内請負管理思想はなんら変わってはいない。

3.現場作業の実態記録が重要な理由
 請負管理の思想が根強い日本の現場管理の実態の中で、現場作業や品質管理のマニュアル化がいかに難しいかが理解できるであろう。だからこそマニュアルの作成やISOの規定を先行させてはいけない。白紙の状態で現場作業の事実をありのままに記録し、その記録を全社員で合意される作業標準化を進めることが重要である。これがマニュアルのたたき台としてスタートさせ、本物のマニュアルやISOの基本にならなければ名あらない。繰り返しになるが施工の事実記録からスタートすることで、観念的な架空の作業手順化や形式主義のマニュアルになることを防がなければならない。事実の作業の記録があればこそ実態の改善が進み作業も進化するのであって、形式的で建前のあるべき姿を想定した規定を作成してはいけない。すべての現場作業の実態記録ができ上がれば、ISOは成功したものと言っても過言ではない。

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