<131>日本的経営の反省期<その1>
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 8/28(日) 09:29:57  返信も含め全削除

1.終身雇用制がすべり出したきっかけは
 市場経済には自力経営という意識が強く要求される。何故なら自由主義経済であり自力の経営が要求され、他人が援助してくれる仕組ではない。市場経済における近年の激しい競争の傾向が、日本的経営の特色である終身雇用制に大きな影響を与えている。終身雇用制は、企業に所属してから定年まで継続雇用される制度であるため、平均寿命50才の時代に人生50年と言われていた高度成長期前夜までは、定年50才の時代は死ぬまで一生働くという制度となっていた。しかし、人生80年時代を向かえ定年を60才に延長したとしても、未だ人材の能力に余力が残っている。そこで第二の人生が話題になったが、今や第二の人生という意識ではなく、当然のように次の仕事に就くことが当たり前という時代になった。このように寿命の延長は人生観を変え、仕事に対する価値観や行動に大きな影響を与えてきた。今や生物学的見地からみて終身雇用制が、日本人の仕事観にズレが生じさせていることを示している。

2.忠誠心の希薄化と終身雇用制度
 平均寿命の延長によって労働提供期間の延長は、終身雇用制の定年延長となって現われ、更に働く意思と能力があれば雇用を延長する企業も現われてきた。全体としては少数であるが、終身雇用制度の利点を十分に発揮できるようにして活用している。これらの企業の特色は、比較的中小企業で熟練した職員が必要な業界に見られる現象である。終身雇用制度は、技量の身に付け方や生活設計がし易く安心して働くことが出来る利点があり、更に日本には伝統的に所属集団に対して忠誠心という文化があった。昔であれば殿様に対して自分の命まで投げ出すほどの忠誠心があった。自分が所属している集団に対して異常なまでにも忠誠を尽くすものであり、特定の集団に所属することが重要な時代であった。この場合は仲間が結束して敵に向かう意識が強く、このような集団の力は、軍隊という集団であろうが企業集団であろうが、集団として大きな力を発揮することは言うまでもない。しかし現代社会では過去のような忠誠心は馴染まないし、現代社会には必要性が薄くなってきた。

3.集団主義の崩壊と終身雇用制度
 外敵が多く危険と不安に満ちた社会では、自由な個人行動は望めないため、集団化して身を守るしか方法がなかった。この時代には集団の結束が強力に作用する時代であり、他の動物界にも見られるように、力の強い動物は個の行動をとるが、弱い動物は集団化して生命の危機を回避しようとする。現代社会は、情報化社会に入り安全区域が鮮明に分るようになった。そのため安全区域においては集団行動をとる必要性を感じないし、結束の強い集団が以前よりは必要性を感じなくなった。終身雇用制度は、集団化や忠誠心の必要性が高い環境の下で出来上がったものであり、個人行動で容易に生き抜くことが出来ない時代の産物である。そのため終身雇用制度は、集団主義化の崩壊と共に、人生80年時代の自由行動時代に合わなくなったことは事実であり、今少し終身雇用制度の内容を工夫するか、或いは新しい雇用制度に切り替える時代に来ているのである。

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