<139>日本的経営の適否をチェックする
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 11/6(日) 07:08:53  返信も含め全削除

1.日本的経営が日本人に馴染んだ理由
 日本的経営は、日本の村社会文化として醸成された経営文化であり、近年まで成功を収めてきた。その特色は仲間による団結した集団によって外部の競争相手に立ち向かうものである。したがって内部の人間関係は団結心が非常に強く作用している。これは強敵に対抗するための仕組としては、戦争であろうが、ビジネス競争であろうが、仲間が団結して敵に立ち向かうことは重要なポイントである。そのため、集団内部は団結心が強く作用する仕組が必要であり、家督相続のお家騒動や内部抗争があってはならないのである。お家騒動が起き難い状態を構築するためには、跡目相続が明解に序列化していなければならない。長男による家督相続の文化もそのためのものであった。また、内部抗争が起き難い状態にするためには、能力主義より年令で序列化することが重要であった。これは年功序列と言うより年令序列という方が適切である。集団内部では昇格人事までが全員が見える状態であり、近年までは日本人の特性に馴染んで運営されてきた。

2.日本的経営の利点
 年令序列による昇格人事や昇給について合意され、給与については給与表によって将来収入まで計算が可能であり、退職金まで計算可能であった。そのため子供の教育計画や将来の生活設計までが具体的に予測可能とであり、精神的安定感を与えていたといえる制度であった。仕事についても全社的に方向や行動が合意されることが重要とされ、集団内部の全員が合意するまで十分に検討され、ゴーサインが出るや集団が一丸となって突進する体制であった。そのため仕事上で多少のミスがあっても全員が合意されており、そのミスは仲間によって集団でカバーされ、ミスを犯した当事者も将来取り返す余裕さえ与えてくれた。このような経営環境の中で働く者にとっては安心して仕事ができ、目先の仕事に振り回されずに大局的な仕事をすることが出来る大きな利点があった。日本の製品が良質であることや高度な仕事ができたのも、この日本的経営の環境の中で作られたものであることは間違いないのである。

3.日本的経営の利点がなぜ欠点になったか
 日本的経営が成功した時代のビジネス環境は、変化がスローテンポの時代であったから、集団内部が完全に合意するまで十分な検討する時間的余裕があった。特にピラミット型の人事組織による検討は、稟議書による全社的合意システムであり、決済等の合意完了までは数ヵ月から1年という長期を要していた。しかし、近年の変化の速さからみて決断の遅れは命取りになる時代であって、日本的経営の特色を生かすことができない状況下になってしまったのである。変化のスピードの速さは、グローバル化した世界市場の中で起きた現象であり、地球上のビジネスが24時間止まらず動いている状態は、人類が過去に経験したことがないビジネス環境である。しかもこのビジネスシステムを支えているのは、電子情報機器であり、さらにソフトについてのシステム進化のスピードは、過去に経験したことがないほどの速さで洪水のように押寄せている。この状態の中で古い人的システムだけに頼った日本的経営の余地が激減してきたのである。

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