<20>山崩は二つの管理の原点(2)‥‥‥原価は60%増? 戦略的管理の入り口 コスト低減現場は快適
新規投稿者 高津徹太郎  投稿日 9/1(月) 17:04:05  返信も含め全削除
(4)原価は60%増?
 元請は繰返型短時間作業を指示しても非効率性には気付かない。例えば設備の取付に8時間掛かる作業を想定してみよう。建設業は現地作業なので現場までの通勤時間が掛かる。ここでは片道1時間掛かることにしよう。
 1日で作業が終わるなら拘束時間は通勤2時間+8時間=10時間である。
 4日に分けて行うなら拘束時間は通勤2時間×4回+8時間=16時間、つまり、1日で終わる場合の6割も多く時間が掛かる。他に作業前の段取や作業後の後片付は毎日掛かるので、1日で行う場合よりも4倍の時間が掛かる。その上、寸断した作業は効率が落ちるのである。
 話が変わるが…、通常の作業相場は“m2当たり”などの金額で表示する。しかし、この例のように原価は作業の仕方で激しく変わることを認識すべきである。また、この例ような日々の効率化調整こそが“原価管理の本質”であることも合わせて認識すべきである。
 さて、建築工事では竣工間近になると同時に多数の作業が行われる。このような繁忙期であっても明確に作業順序とクリチカルパスを捉えていないと繰返し型短時間作業を指示しやすいので注意が必要である。完成間近の残余の作業であっても厳格な作業順序があること、また、各作業が持つ余裕時間の活用がコスト削減に貢献することを忘れないで頂きたい。

(5)戦略的管理の入り口
 山崩は厄介である。実際にシミュレーションすると少数資源でもキレイに山崩することが難しいと気が付く。もし元請が山崩の検討もせずに、“こうするよりシヨウガナイ”といいながら納期中心の工程表を作るなら原価管理の放棄に等しい。元請は見積を値切ることがコスト削減と勘違いしていること、膨大な3M費用を施工業者に支払っていることに気付くべきである。3M費用は管理の手抜き代金と言える。施工管理力を発揮することに建設企業の存在価値が有るのである。多くのゼネコンが商社化して施工管理力を発揮できない所に危うさがある。この期に及んでもゼネコン流のやり方を手本とする経営手法が多いことに疑問を感ずる。
 現状では3Mによるコストが1割〜3割掛かっていると見るべきである。このことから、元請のコスト削減の原資が1割〜3割あると言えよう。但し、現状で行う資源の山崩によるムダ・ムラ・ムリの排除は工程管理のほんの入り口である。工程管理のサイクルを回し実情データを収集すると、例えばトヨタのように企業の個性を生かした戦略的な管理システムを定着することができ、他に追随を許さないようなステージ作りも可能となるのである。
 効率的な施工ができると下請が儲かる。しかし、元請が損する訳ではない。下請の原価が下がり、元請の管理力が認められると元請の原価も下がるようになる。

(6)コスト低減現場は快適
 資源を山積してみると計画の悪さ加減が目立ち改善すべきポイントが見える。3Mが排除されると施工がラクになるから計画に近い施工ができるようになる。このため山崩を“計画の実現性検討”と呼ぶこともできる。
 コスト削減とは加工費の低減である。加工費は資源に掛かる時間数に比例する。3Mが少ないと施工がスムーズであり作業時間は少なくて済む。つまり、作業時間が少なくて済むからコストは少なくなるのである。計画通り作業が進むなら数ヶ月前に準備をすることでコストを削減する(時間を金に変える)ことも可能になるだろう。計画の実現性を十分に検討するとトラブル発生が減り、現場担当者が “現場が快適になった”と感想を述べてもフシギでない。

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