回想中国11の2(靴磨きとの格闘2)
新規投稿者 三木 伸哉  投稿日 05/7/2(土) 09:41:48  返信も含め全削除
サクラの出現
隣の靴磨きのおばさんに、一人の中国人の客が靴をさしだした。そのおばさんは瞬く間、5分くらいで磨き上げた。そうすると中国人の男は25元差し出した。
一瞬目を疑った。確かに10元札2枚と5元札1枚である。どうして2元に25元もの料金を払うのか、貧者への一灯か、わからない。この調子だとまたまたふっかけられるかも知れない。
10分ほどで磨き終わって、2元を支払うと、私の手を高島礼子おばさんは、ピーンとはね除けた。「さっきの中国人も25元払ったのを見てるでしょう。2元であるはずがないでしょう。65元だ」と言っているようだ。
 しかし今度こそ日本人の面子にかけても、易々と高い料金を支払うわけにはいかない。こちらも臍下丹田に力を入れて身構えた。2元を拾い、おばさんの手に握らせようとした。そうするとどうであろう。優しげな、目元の涼しげなオバサンの顔が豹変した。むんずと私の腕をつかみ睨みつけている。
「日本人金持ち、そんな2元しか出さないのか。65元払え」と言っているようである。口角泡を飛ばしている。細身の体から渾身の力を込めるのであろう。
力では多少身に覚えがあると言っても、まさかここで暴力沙汰に及んだら、「日本人教師、大連の靴磨きのおばさんに暴行、強制送還で日本に帰国」というような
見出しが大連の新聞に載るかも知れない。憤怒の形相のおばさんを前にして、こちらは、わりあい平然とした態度で、値段の交渉をした。
 そのうちに物見高い、暇人の多い中国人がゾロゾロと見物にやってきた。ざーーと見渡しても30人はくだらない。いつの間にかサクラも消えた。
私は「65元といわれても、そんな金はない。10元なら払う」と引き下がった。
とても2元ではこの場は収まらないであろう。すると横合いから、泉ピン子のような感じのおばさんが出てきて、その同業者に何やら言っている。
「まああんた、いいんじゃないかい、10元で手を打ちなさい」とでも言っているのであろうか。高島礼子のおばさんの手に込める力がゆるんだ。そして10元を手に取った。
私たちの周りにいた大勢の観客は、なんだつまらない、もう終わったのかと言う表情で、ちりぢりに消えていった。
今日の教訓、人様の姿形、顔の作りだけで人間の甲乙を判断してはいけない。
それからは、靴はどんなことがあっても、自分で磨くことにした。
 

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