「男たちの大和とその時代」9の2
新規投稿者 三木 伸哉  投稿日 06/11/7(火) 17:02:19  返信も含め全削除
 昭和二〇年四月七日、戦艦大和が轟沈したとき、神尾少年は西君と共に波間に泳ぐのであった。しかし疲れ果てた西少年は海底に沈んでいく。神尾少年は西君を必死の思いで捜して、海底へと向かうが、所詮無駄であった。
 終戦を迎えて、まず彼は親友の西君の母親を訪ねる。段々畑の山並みの上、西君の母親は農作業をしていた。
「西君は亡くなりました」報告する神尾に「いやーあの子は死にはせん。必ず戻ってくる」「いや亡くなったのは事実です。ボクが傍にいたのです」と神尾。

「そんであんた一人ぬけぬけと、よう戻ってきたもんやなー」の言葉に、悄然とうなだれる神尾。「自分一人生きて戻ってきて済みません」と母親に。
そのまま、その場を立ち去ることのできない神尾は、沈黙したまま西君の母親の田植えを手伝う。その様子をじーっと見つめていた母親は、
「あんた何も食べていなさらんのだろう。これお食べ」出された握り飯を食べながら、神尾は何を考えていたのだろう。親友の西君が目の前の波間に消えていった。必死に探した。しかし自分ではどうすることもできなかった。
そして西君の母親の言うように、おめおめと還ってきた、嬉しいはずがない。

★ 一口メモ    赤紙
召集令状は赤い紙に印刷されていたので「赤紙」の別名。
この赤紙には入営する日時場所が書かれている。昭和一二年以降、赤紙で招集されたのは、陸軍五九〇万、海軍四八万人といわれている。

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