満州今昔物語 5の1
新規投稿者 三木 伸哉  投稿日 07/7/30(月) 16:00:43  返信も含め全削除
満州今昔物語 5
友人A氏の満州時代 3(ソ連軍の進駐の中で)
8月9日にソ連軍が進入してきた。ソ連軍が日ソ中立条約(不可侵条約)を破って怒濤のように満州の大地に進入してきたのである。ソ連は日本と不可侵条約を結んでいるから攻めてこないはずだと、僅か10才の友人は怪訝そうな表情で空を眺めたという。兵員174万人、戦車5千台あまり、飛行機およそ5千機、驚くべきソ連の兵力がマンチューリ、黒竜江の北方からも押し寄せた。
迎え撃つ関東軍の主力部隊は南方にもっていかれ、飛行機は200機あまり、戦車は無きに等しく、70万の兵士たちの中には銃さえもてない者が10万人であった。戦後その日本兵のうち57万あまりが捕虜となってシベリアに連れて行かれ、そのうち5万6千人が彼の地で果てたのであった。
私の義兄もシベリアの捕虜で3年間、見る影もなくやせ細って帰国した。隣の飲み友達の先輩も、捕虜となって連行され、あの鬱蒼たるタイガーの材木の切り出しに、したたか腰を打ち、生涯足を引きずって暮らしていた。
 
松花江のあるところに辿り着くと砲声が止んだ。橋がない。関東軍が橋梁を爆破して逃げていったのだ。こちらの岸には八露軍、向こうの岸には国府軍が対峙している。両軍とも打ち合うことをやめて、日本人が避難するのを傍観していたという。上陸用水艇に乗り込んだ。列車の出るところまで移動したが、あまりにも日本人の避難者が多く、捌ききれない、列車に乗せることは困難であった。
また元の処に戻りなさいというお達しが出て、チチハルのかつての家に戻ることになった。その心中はいかばかりであったろう。

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