日本の旅とその歴史の背景 24(島原天草にて 4)の1
新規投稿者 三木  投稿日 08/10/10(金) 10:26:13  返信も含め全削除
日本の旅とその歴史の背景 24(島原天草にて 4)
からゆきさんと共に暮らした筆者
筆者は、最初は「どなたか、からゆきサンのことを知りませんか」と聞いて歩いた。「そげなことは聞いたこともなか」とぶっきらぼうに応えるか、石のように押し黙ってしまうかであった。他郷の者には、わが産土の恥辱は知られたくない、という共同体的な自衛意識、連帯意識が働くのであろう。
筆者は、これは容易なことではないと悟って諦めかけていた。ある食堂で焼きめしを注文しながら、みすぼらしい老婆が、淡い紫煙を旨そうにすっている姿を見て、ハイライトを取り出し「おばあさんも一本吸わない」という言葉から、近づきになる。
人間は惨めな過去には、触れられることを嫌う。少女時代から南洋のボルネオで春をひさいでいた、この骨張った140pほどのお婆ちゃん、彼女から「からゆきさん」体験記を聞き出すまで、筆者の苦労は並大抵ではなかった。
たばこを吸いながら、「そりゃあ、ねえさん、わたしゃ確かに天草の生まれじゃけんど、小まんときから、外国さ行ってた人間じゃけん」の言葉に、そしてその身なりに、日本よりは遅れた地域の外国で暮らしていたという事実が分かった。「からゆきさん」だ、と言う天啓のようなものがひらめく。
 

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