ふたたび「人間の条件」を見て 3
新規投稿者 三木伸哉  投稿日 12/1/19(木) 05:53:14  返信も含め全削除
ふたたび「人間の条件」を見て 3
五味川純平という作家について
作家としてまだ名をはせていない頃、五味川純平は、900枚の原稿を「人間の条件」という題名をつけて、三一書房編集部に持ち込んだ。編集者の塩沢実信は当時をこのように思い出している。
 無名の新人の生原稿が「人間の条件」という、アンドレ・マルローと名作の同名の書名をつけて持ち込んできた。分厚い原稿をパラパラとめくったが、一か所も訂正したり、朱が入っていない。無名の新人が、臆面もなく持ち込んだこの9〇〇枚の原稿を、一晩かけて読み終わったという。
得体のしれない興奮で夜のふけるのも忘れて読み終わり、大声で叫びたくなうような衝撃を受けて、翌日電報を打った。「ヨロコンデシュッパンスル シキュウアイタシ」と。傾きかけていた三一書房の社運をかけての出版開始になった。
 社内の反対を押し切って出版したが
昭和33年ころの出版界は、左翼思想の本も陰りを見せ始めたころであった。小さな出版社が無名の新人の本をどのように宣伝したところで、人の口の端にのぼる様なこともないであろうという思惑もあった。
1万5000部も売れればもうけものと思っていたところ、週刊朝日がこれをトップ記事で取り上げた。朝日は「国民文学の誕生」という特集記事で、1958年2月16日の週刊朝日の10ページ分を、この無名の作家の「人間の条件」の記事の紹介で埋め尽くした

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