<1>請負契約の不安材料とその配慮
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 08/6/1(日) 23:06:54  返信も含め全削除

1.受注産業特有の不安材料について
 受注産業である建設業や造船業、航空機産業等の大型生産物の受注産業もあるが、中には小型の注文品を作る工場や印刷業のような中小企業もある。これらの受注産業の特色は、販売行為が先行し生産行為が後になる特色をもっている。そのため生産物の発注者は、生産開始前に売買契約を締結することになることが受注産業の特色となっている。この点が受注産業の不安材料の根源となっている。売買契約の時点で生産物を、自分が想定した機能や品質の物ができるかの不安もある。受注者側にとっても、生産物が完成した時点で、生産物の代金が予定通りに回収できるかの不安感がある。受注生産される生産物は特注品であるため、引き取りに不具合が生じた場合は、他に転売することができない場合が多く、大きな損害を被る場合がある。そこで受注者は、代金の一部を前金として要求する場合があり、大型の生産物を請負契約の場合は、契約と同時に代金の一部を発注者から前払金として支払われることが慣例化している。

2.発注者と受注者双方の不安材料
 請負契約の場合は、上記のように発注者と受注者の双方に不安現象が多く発生する。生産者である受注者側には、自己資金調達能力を超える多額の資金を必要とする場合も多く、発注者から代金の一部を前受しなければ生産を開始することができない場合もあり、この前払金制度によって、資金を調達することが必要となる。これも完成時の代金回収の不安を多少解消されることにもなる。これに対して注文側の発注者は、生産前に多額の前払金を払うことになれば、この前払金に対する不安も重なり、生産される製品の機能や品質の確保に関する不安と二重の不安感に襲われる結果となる。そこで、両者の不安解消のために建設業関連法令で、両者間のトラブル解消のための規定が設けられている。

3.発注者側の品質不安のための法的規制
 不安感については発注者側の方が多少大きく、その不安感を解消させるため関係法令に規定されている。発注した生産物の機能や品質については、国土交通省や都道府県に、過去3年間の工事経歴書を公開することを義務付けており、注文者が請負契約を締結する前に、想定される生産者の生産物の機能や品質レベルを、事前に公開された生産物の現場を見聞することができるように配慮されている。更に契約についても厳格に書類によって契約書を交わすことも規定されており、発注者保護という観点から法的規制が厳しく規定されている。

4.発注者側の前払金の不安解消のために
 受注産業界には、請負契約と同時に多額の資金を前払することが慣例となっており、発注者にとっては前払金も大きな不安感を与える結果となっている。そこで受注者の財務状態を公表するよう法的規定があり、請負契約を締結する前に、事前に受注者の財務内容を入手し、財務分析による事前の審査が可能であり、財務的な安全を確認した上で請負契約することができるように配慮されている。

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