<22>注文生産の不具合が共通する契約栽培
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 08/11/2(日) 12:40:09  返信も含め全削除

1.農業における注文生産と入札制度
 売買契約が生産に先行する注文生産の形態は,どの産業界においても存在するが,農業における注文生産の形態は,特定の農産物を一定面積を作付けすることを約するもので,これを契約栽培という。この契約栽培は注文者の思惑と生産者の思惑は必ずしも一致しにくいため,将来の現品引渡しの時点で不具合が発生する。全ての産業界の注文生産の中でも,特に農業における注文生産の不具合が多く,不具合の典型的なものになっている。何故なら生産者は良い品質の農産物を栽培しようと努力しても,天候不順による不作は天災であり,人為的に対処することができない。予定された数量と品質の農産物が必ず生産されるとは限らない。このような契約栽培の形態は,農業における注文生産の典型的なものであるが,この契約栽培の形態を,市場原理にしたがった一般競争入札によって売買することは,非常に難しい問題が存在する。

2.一般競争入札が高まる中の栽培契約
 買い手側の販売業者(流通業者)は、生産農家と栽培契約を一般競争入札で決めることは非常に難しい。入札に参加する生産農家を特定せずに,不特定多数の生産農家を相手に一般競争入札方式は可能であろうか。それぞれの生産農家の土壌の状況が違うし,畑の大きさや形状も違いがあるし,その土地が対象となる農産物に適しているか等,また農薬に対する思想や適切な農薬管理技術が適切であるか等,生産者の人生観にまで影響する時代である。このような時代だからこそ消費者も生産者の顔が見える栽培に関心が高まっているのである。生産農家が誰でも良いから安ければ安いほど良いという一般競争入札方式は,契約栽培には馴染まないのである。

3.生産者の思惑
 生産農家としては,これから生産する農産物が豊作で品質が良く高値で売れることを期待するが、現実には天候に大きく左右される農産物は,収穫時の豊作か不作かは予想できない。仮に豊作であったとしてもその年の生産物の競合が激しければ,価格は暴落してしまうのである。また凶作であっても品薄状態になれば,高値で売れることもあり,思わぬ収入を確保することができる場合もある。農業生産者は,常に収入の変動に悩まされるものである。そこに契約栽培のメリットがあるとして採用される場合がある。契約栽培の値段交渉は,平均的な通常の価格になるが,生産者として生産原価を回収し,低めてはあるが一定の収入も確保できる契約栽培は,安定的な農業収入が得られる手段として受け入れられている。

4.特命による随意契約になる必然性
 注文生産取引の不具合は,製品が生産される前の時点で売買契約をする点にあり、この点で全ての産業界において注文生産の不具合は解消されていない。特に農産物の注文生産は,売買契約の段階では生産物の品質や数量が完全に未確定であり,他産業の注文生産に対して農産物の生産は不安材料が多すぎるのである。売り手側、買い手側の双方の不安材料は過大に大きいのである。このような状況下に置かれている契約栽培は一般競争入札には馴染まず,特命による随意契約になる必然性があるのである。

返信 ご意見やご質問をどうぞ

パスワード

一覧へ戻る】 ※最新の画面を表示するには再読み込みしてください.