<26>コンプライアンス論議と一般競争入札
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 08/12/14(日) 19:49:39  返信も含め全削除

1.コンプライアンス論議
 近年のコンプライアンス論議の中で、法律遵守という意味に使われることが多くなってきたが、この言葉は多様に使われており定義が難しい。広い意味では「社会秩序を乱す行為をしてはいけない。」という意味にも使われている。社会秩序を乱さないために法律を制定するのであるから、結果として法律遵守ということになる。では社会秩序とは何か。法律論的にいうならば公序良俗に反さない行為ということになる。この公序良俗は、国や民族等の集団の中ででき上がった善良な風俗習慣のことである。これは人間の集団内における生活文化の中で認知され定着した習慣文化であるから、法律の制定に当って公序良俗に反さないものは当然のルールとして認識されるものであり、世間の常識的な事柄を法制化されたものである。このような論法で一般競争入札を、市場論の視点でみると、多くの問題を抱えたままに放置された常態のままである。

2.一般に公正妥当である商慣習と一般競争入札
 ビジネス界においては、一般に公正妥当な商慣習という規範がある。生活文化に関する公序良俗に相当する基準が、ビジネス上では一般に公正妥当という商慣習を指している。そこで問題となることは、一般競争入札の制度が一般に公正妥当な商行為に該当しているかどうかである。なぜなら一般競争入札が、広く一般大衆のビジネス手法として、一般に公正妥当な商慣習として認知されているかどうかが問題になるからである。実際の商慣習としては「特命による随意契約」が常識的であって、これが一般的に認知された商慣習である。

3.公共調達の特殊論
 一般に公正妥当な商習慣としての特命による随意契約が一般的であるが、公共調達の場合は一般競争入札が原則になっているのは、公共調達の公平、公正性の理念からくるものであろうが、仮に公共調達は別な理由があるにせよ、一般に公正妥当な商慣習を無視することはできない。市場論として注文生産の取引が、特命による随意契約になる必然性をもっと深く研究すべきである。一般競争入札を大前提に研究すれば、コンプライアンスの問題が顔をだしてしまい、市場論の展開がし難いからである。

4.コンプライアンスと注文生産市場の常識論
 注文生産の一般競争入札は、売買契約の時点で現品がないために多くの不具合が発生する。既製品についての競争入札はあまり不具合が発生しない。注文生産の場合は、客側の発注者は品質等の不安が付きまとうため、慎重に取引相手を決める必要がある。そのため一般競争入札を敬遠し、特命による随意契約を選択することになる。一般競争入札の最大の欠陥は、買い物をする側の発注者に取引相手を選ぶ権限を放棄させることである。注文生産は特に大型で高価なものが多く、しかも特殊でオリジナルの物を生産するもので、取引相手は誰でもいいから安ければ安い方ほど良いという取引形態は、市場論として対等性が崩れてしまう。一般競争入札の最大の欠陥は、取引相手を選ぶ権利を放棄させることであり、市場の商慣習としては常識外のことである。公平な市場論の視点でみれば不合理である。コンプライアンスの議論は、この市場論が解決した後の議論ではないだろうか。

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