<33>公共調達の激しい競争入札に苦悩する
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 09/2/1(日) 18:01:19  返信も含め全削除

1.受注産業の苦悩
 注文生産業者は、「受注なくして経営なし」という言葉をよく使うが、確かに受注契約が順調でなければ、経営が成り立たないのであるから当然である。企業は一定の生産能力を維持するためには、一定額の固定費が発生するのであるから当然である。この固定費を回収する受注がなければ企業は継続することができない。しかし日本の経営環境は、依然として日本的経営が根底にあり、年令型の終身雇用制が根底に流れている。人材の雇用は終身雇用が原則となっている。そのため、多額な人件費が固定費となっており、受注がなければ固定費がそのまま赤字となって現れる。そのため建設業界では、出来るだけ人材を抱えないように身軽にし、人材は下請企業や孫請企業に抱えてもらい、適時に人材の供給を受ける仕組みが昔から構築されている。元請については、技術と経験のある高給取りの技術者の継続雇用をしていなければならないため、固定費である人件費の負担は、業界にとって大きな負担となっている。

2.グローバル化による人材市場の影響
 日本における近年の雇用形態は、正社員族と非正社員族の雇用形態に分かれてきた。その中で非正社員族の人材市場が拡大しつつあり、グローバル化の現象で世界の労働市場に類似してきた。この雇用形態の動きは、労働関係法令の改正により、人材派遣制度が認められたことがあるが、一番の要因はグローバル化による影響である。日本の労働市場も世界の労働市場に連動しているのである。近年の米国発の金融不安から世界中に広がった不景気の影響で、非正社員の継続雇用が打ち切りになったが、更に日本の雇用体制の根底魔まで揺さぶられてきた。いよいよ正社員族の雇用形態までも大きく影響する兆しが現れてきた。今後は更に終身雇用体制を維持することが難しくなる可能性が出てきた。もし法令等の改正で全ての人材を正社員制とし、終身雇用を強要されれば、企業は正社員族の雇用を恐れ海外に生産拠点を移す結果になり、日本は一挙に産業空洞化を起し、世界の平均的な規模の大失業化時代に突入することが予想されている。グローバル化の恐ろしさである。

3.入札環境と終身雇用制の悩み
 受注生産の苦しみは、日本的経営の特色である人材の雇用形態に苦しみが存在する。経験豊富な優秀な技術者や技能者を多数抱えることは、企業にとって「良い物を安く」提供することは市場経済の命題である。しかし一方で優秀な人材は、大きな固定費の負担となるのである。その固定費を回収するために、企業は一定量の受注を確保するために血眼にならざるを得ない。公共調達の工事を例にすれば、落札できるかどうか分からない状況下でも一定の人材を継続雇用していなければならない。一定条件を満たす技術者がいなければ受注資格がないからである。このような状況下で入札をするのであるから、入札時の競争が激しくなるのは当然である。受注産業の宿命であり、これを解消するよい方法がないのである。

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