<40>総合評価法の欠陥に揺らぐ入札制度
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 09/3/29(日) 21:22:33  返信も含め全削除

1.公共投資と公的発注者の裁量権
 近年の公共工事の発注は、一般競争入札が原則となったため、一般競争入札の欠陥を補う事が必要になり、総合評価法に頼らざるを得なくなってきた。しかしこの総合評価法にも多くの欠陥があるため、業界からの不満の声が続出しており、それを解消するため総合評価法の改正が繰返されている。特に地域地元業者への配慮を強く求めてられているため、発注者としても小額な工事については、地元の配慮をすることが重要であるとの認識で、総合評価の評価点の中に地元業者の評価するよう努力している。本来、公共工事には経済政策の役割もあるため、地方への所得再配分の観点から、地方業者の要請に沿った施策として、地元業者が担当することは良いことである。また災害時の緊急事態に対する地元の体制を整えておくことも重要なことである。このような施策として公共工事の役割もあり、地元業者を単純に優遇扱いしているのではなく、公的発注者は施策としての裁量権の範囲と考えるべきである。

2.公的発注者の裁量権と市場経済
 公共工事は、民間工事の場合と違い、生産物の施工だけにとらわれてはいけない。古い話になるが戦後の失業対策事業としての公共工事は、失業者を救うための施策であったし、エジプトのピラミットも、単なる宗教的なものだけではなく、公共事業の要素が高かったとも言われている。このように公共事業は経済政策や社会政策として重要な側面があるのである。しかし問題は、施策の面だけを強調しすぎると、本来の市場経済の制度を無視する結果となり、今日では国民の視点では受け入れられるものではなくなった。いかに公共工事の目的が高度な施策としての役割があったとしても、市場経済の大原則を守りながら実施する時代になったのである。公共工事も市場経済のシステムを無視することは、国民が許さなくなったのである。公的機関も市場原理に従って運用することを国民が強く求めているからである。

3.一般競争入札の欠陥を認めるべき
 一般競争入札は既製品の市場において発展したものであるから、既製品市場においてのみ運用すべきと考える。オーダーメイドの市場では通用しないことを国民も認知すべき時期にきている。一般競争入札の欠陥は、いかに総合評価法を工夫してみても、一般競争入札の不合理性が解決することができないからである。つまり、一般競争入札では、生産する前に激しい競争が作用するため、オーダーメイド市場においては適切に機能しないのである。しかもオーダーメイドの生産品は高度に特化しており、しかもオリジナルな物であるから、単純な一般競争入札は成立しないのである。このオリジナルな生産物の入札を、一般競争入札の不具合を総合評価法で解決しようとして、数多くの条件を付け過ぎる傾向にあり、これでは一般競争入札が名ばかりの状態で、もはや内容は一般競争入札制度ではない。一般競争入札は失敗に終わったと見るべきである。入札の競争性だけを考えて、実がない制度になってしまったことを認めなければならない。

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