<42>一般競争入札に関する国民の誤解              
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 09/7/5(日) 13:14:04  返信も含め全削除

1.市場経済の基本的なルール
 市場経済は、良い物をできるだけ安く提供する仕組みで成り立っている。これは古今東西の普遍的なルールである。このルールが適切に機能する市場を国民は期待している。それには幾つかの条件が整っていなければならない。第1に、市場において取引の自由性が確保されていなければならない。本来、自由主義経済の市場のルールは、いかなる拘束もあってはならない。例え法律であっても自由な取引を制限すべきではないとの主張まである。第2に、市場の取引は対等性が確保されていなければならない。これは取引双方が公平な立場になければならないからである。第3に、取引環境が競争性になっていなければならない。市場経済は自由な競争原理によって、公平性や品質の向上、価格の適正化を促進させるからである。第4に、透明性が確保されていなければならない。国民は、適切に確認できることを強く求める時代になった。そのため、これらの条件が満たされる仕組みが重要で、生産者から消費者までが、効用を公平に享受できる仕組みが重要だからである。

2.一般競争入札の大合唱
 国民の目から見れば、市場経済の条件を最も適切に満たすものとして、一般競争入札が認識されているのである。何故なら、取引相手を特定しないため、誰でも自由に入札参加ができるためである。そのため過去に行われていた取引相手を限定する指名競争入札や随意契約は、自由性や公平性、競争性が不適切であると指摘されているのである。指名競争入札は指名業者に限定してしまうため、市場経済の自由取引の仕組みに制限を加えてしまうし、指名業者の選定が不透明であると指定されていた。また随意契約は、取引価格の不適さが起きる可能性が高く、しかも不透明であると指摘されていた。近年この点を強く指摘する声が高まったため、公共調達について国民の声に応えるため、全ての公共調達は原則として、一般競争入札の導入に踏み切ったのである。

3.一般競争入札に対する国民の勘違い
 一般競争入札は、既製品市場において発展したルールであって、注文生産市場においては必ずしも適切に機能しないのである。既製品とは、生産済みの品質確定品のことであって、注文を受けてから生産する注文生産品とは本質的に違うのである。注文生産は、市場経済の原理に照らして、第1の取引の自由性はよいとして、第2の対等性は、当初から崩れてしまう。発注者である客が取引相手の選択権を自分から放棄している。市場において価格競争に勝ち抜いた生産者が取引相手になるからである。民間の取引では、取引相手の選択権を自ら放棄することはあり得ないのである。したがって民間取引では、信頼でき生産者を探して特命による随意契約になる必然性があるのである。全く誰に決まるか分からない生産者に発注する一般競争入札の制度は、市場経済の競争原理からみれば良いように見えるが、完成後の品質や機能等の問題もあり、相手は誰でもいいから安ければ安いほどよいという市場論理が通用しないのが注文生産市場なのである。

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