建設産業研究部会

2001/10/17

建設-2<ISOを機能化する>ISOの失敗事例と再生化

建設-2-2 ISOと類似の各種制度の特色

(1) JIS制度の思想とISO思想の相違点
 日本工業規格いわゆるJIS(Japanese Industrial Standard)は、製品自体の形状や材質等一定の品質保持について、その信頼性を保証するもので、「JISマークの表示」を与える制度である。この制度は自社製品の品質を社会に訴える手法として、現在でも有効に機能していることは間違いない。しかし、次の二点について問題が生じてきた。
 第一の問題は、地球規模の流動化社会の中で、JIS制度を過度に要求すると規制的な現象になって現れ、流動性を阻害する場合がある。国レベルで過度にJISを強要すると外国製品の排除ともなり規制の一種であるといわれ、近年は少々後退した感がある。
 第二の問題点は、JISは完成品の品質保証であるため、品質変更の必要性が生じても認証の関係で生産体制を簡単に変更するわけにはいかない。そのため生産管理体制や生産過程が固定化してしまう場合があり、日進月歩の技術革新に馴染まない面が生じてしまうのである。その点でISOは、日進月歩の技術革新を取り組みながら進化することを前提にした流動的な制度であるから、技術革新時代を想定した制度であるということができる。

(2) PL法の思想とその役割
 1995年に施行された製造物責任法いわゆるPL法(Product Liability)の思想は、流通段階ではできるだけ規制を排除し、ユーザーサイドの段階で製品に問題が発生した時点で法律的な行為におよぶ制度である。PL法の制度は、JISが入口的規制の思想であるのに対し、ユーザーの使用段階で問題が発生した時点で、法律的効果が発現する制度である。その点で現代社会は、一種の出口型責任思想の方向へ進んできたとみるべきである。PL法は市場の視点でみると市場参入時の規制が除去される効果がある。

(3) QC運動とその思想
 品質管理いわゆるQC(Quality Control)は、生産現場や特定の部門における検査セクションによって行われる「品質管理の社内運動」である。つまり社内における1部門の品質改善運動であり、現場が一体化した運動として品質管理に効果がある。特に従来型の日本人の気質(同じ釜の飯を食った仲)にあった運動として成果が上がり、日本経済の高度成長には大きく貢献した。JISやISOは社外の機関が評定する制度としての特色があるのに対して、QC運動は社内運動である特色がある。

(4) TQC制度とその思想 
 総合的品質管理いわゆるTQC(Total Quality Control)は、全社的な品質管理制度であるが、1996年日本科学技術連盟が、TQCという名称を「総合的品質管理経営」としてTQM(Total Quality Management)に名称変更したものである。QCが現場だけの品質管理であるのに対し、下請けも含めて一体化した全社運動まで高めたものがTQMである。JISやISOとは異なり外部機関が生産工程や品質等を審査する制度ではなく、QCと同様に自社企業が中心となる運動であって、社内運動の特色を持っている。

(5) 住宅性能表示制度の新設
 住宅の性能を知るための住宅性能表示制度として、平成12年4月1日に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が施行され、同年10月から運用が開始された新しい制度である。同法は事前に性能を検討する制度と、事後の10年間を保証する制度から構成されている。性能保証の内容は、耐震・耐火・断熱・換気・高齢者対応等の28項目からなっており、国土交通省が指定した評価機関が2〜5段階の等級や数値で性能を表示する制度である。北海道の指定住宅性能評価機関としては、(財)建築指導センターが評価機関がこれにあたり、更に、住宅紛争処理支援センターや弁護士会による指定住宅紛争処理機関が設置される。

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