建設産業研究部会

2001/10/17

建設-2<ISOを機能化する>ISOの失敗事例と再生化

建設-2-4 日本の技術文化の伝承法

(1) 日本人にISOは馴染まない
 日本の職人芸として身についた匠の技は、決して本人から公開するものではなく、弟子達は長い時間をかけて親方の技術を盗んで覚えなければならなかったのが、日本の技術伝承の文化であった。日本には技術や技能の手順を活字化して伝承させる文化はないのである。日本の伝統技術を伝承させるシステムは、長い時間をかけて伝承する方法で今日に至っており、多民族の中で発案されたマニュアル文化やISOは基本的に日本の職人気質に馴染まないのである。

(2) 宮大工の伝承法とISO
 宮大工にISOを要求したら一喝されるのが落ちであろう。何故なら、宮大工の施工方法は、生産効率を考えた施工法ではないし、芸術的な作品を製作するための技術であり、自分で磨いた技術の真髄を伝承するため、システムとして考えもしなかった時代の産物である。時間がスローテンポの社会では、宮大工の技術伝承法が機能していたが、今日のような技術革新のスピードが速い時代には、日本型の伝統的伝承システムでは、技術の伝承が遅くて機能しなくなってきた。これでは激変社会には対応することができないのも当然である。

(3) 隠し味と技術の承継
 調理人の隠し味とは、隠してあるものであり調理人から積極的に公開するものではなかったから、盗むことしか承継する方法がなかったのである。このような泥棒伝承システムともいうべき方法は、伝承にかなりの時間を要しており、ビジネス社会がスローテンポ時代には機能したが、後世に伝える方法としては決して効率のよい伝承法ではなかったのである。また日本は伝統的に技術や技能等は個人の所有物としての意識が強く、企業の技術財産として蓄積する思想はなかったのである。しかし近年の企業は、技術や技能等の情報を社内に蓄積し、この蓄積された技術情報を進化させ経営の資源として競争力をつけなければ生き残れない時代がきたのである。チェーン展開によって急成長しているレストランチェーンは、技術や技能等を社内に蓄積したマニュアルによって成功した例である。

(4) マニュアルに馴染まない日本人の弱点
 日本人にマニュアルが馴染まないことは先に述べたが、電子社会の新しいビジネスモデルや新しい経営スタイルにはマニュアルは欠かせない道具であり、経営資源としての財産でもある。これからの経営管理の道具としても避けて通ることができないのがマニュアル手法である。技術や技能をマニュアル化した電子情報を蓄積することがかなり研究されており、いまや経営思想までがマニュアル化し、電子化されて蓄積する時代になってきたのである。中小企業もいよいよマニュアルを戦略的に運用しなければならない時代になったのである。

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