建設産業研究部会

2001/10/17

建設-2<ISOを機能化する>ISOの失敗事例と再生化

建設-2-8 ISO成功のポイント

(1) 真実な実録が重要
 ISOは、現場の現状である本物の記録がなければ、自社企業に適切なシステムに改善や進化させることができない。事実を隠したがる日本人の欠陥をどうするかが課題である。現在の施工事実の記録からISOの内容を進化させることが成功のポイントである。また事実記録は将来の進化の状況判定や成果測定の基準となるのであり、品質評定・工程改善・生産性向上・原価測定等のモノサシとして重要な機能を果たすのである。ISOの成功のカギは、スタート時の真実な記録がベースにしてスタートすることが、成功への道であることを十分に留意しなければならない。

(2) 工程表による時系列情報化
 ISOは時系列情報と深い関係にあり、すべての作業事実(事務系・生産系等)を工程表によって時系列に電子情報化することがポイントである。スタート時は、簡便な時系列表でよいが、時系列情報の事実記録が如何に重要であるかを、全社員で熟知してからでなければISOはスタートしてはいけない。ISOは決して形式的なものではなく、現実に活用するための重要な道具であることを忘れてはならない。工程にしたがった電子情報記録を残すことが第一歩となるのである。自社の真実の事実情報を電子化することがISO成否を左右するのであるから、時間をかて慎重に真実の事実記録を残すことがISO成功させるポイントである。

(3) 失敗記録の重要性
 過去の失敗事例の記録があれば、事例を分析しその事態を回避するための研究もできるし、危機回避の手法まで研究が進むであろう。失敗の情報が重要な役割を果たすのである。当然ISOを進化させるための重要なきっかけとなるのである。したがって失敗の事実記録がISO成功のポイントとなるのである。しかし、自分の失敗の記録を残すことは、自分の恥を公開することであり心理学的にはかなりの難問であり、日本人には一番苦手な作業である。しかし、この難問を解決すること以外にISOを成功させる道はないのである。如何に失敗の記録を残せるか、心理学的研究や社内の意思統一も重要となるのである。

(4) コストアップ論の危惧
 ISOを新しく導入する場合、新しい品質管理制度を導入するのであるから、外部の審査機関の審査を受けなければならないのであり、一般的には莫大な導入費用の負担を想定するであろう。当然かなりの費用が発生する。しかし、従来型の日本の工事管理方式では、ISO取得に関する諸費用を吸収することはできない。それは社会主義的な思想を引きずった工事管理方式であり、近年の超競争社会もとでは、従来型の経営管理が十分に機能しないしためであり、経営管理手法が臨界点に達しているからである。そこで従来型の経営管理手法ではできなかったデジタル情報共有型の経営管理手法に切り替える時代がきたのである。現場においてはこのデジタル型の原価管理手法にはISOが馴染むであろうし、この手法を用いることで大きなコストダウンの余地が残されている。この方法でISO関連のコストは吸収され、むしろトータル的に大きなコストダウンになっている企業が出始めているのである。

(5) コストダウンの大きな効果
 初めからISOの取得を目的とするべきではない。当初は、作業の事実を電子化することを目的とし、これが当初のマニュアル検討の叩き台とすることである。あとは作業を進行させながら改善を重ねることである。この改善過程においてコストダウンにつながるヒントが隠されており、このヒントを発見することも大きな財産となるであろう。同時にコストダウンのトレーニングとしても重要な意義がある。本来ISOは品質管理が目的であるが、デジタル型工事管理の道具としても有効に機能することを忘れてはならない。ISOの取得の前にe思考型原価管理のノウハウを構築すべきである。その過程がISO導入上のトレーニングともなり、結果的に生産性が改善されコストダウンにつながるのである。ISOの取得は二次的な副産物として位置付ける方が成功するであろう。

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