建設産業研究部会

2001/9/24
改訂 2001/11/26

建設-1<工事原価の本質>
[原価縮減の原理]

建設-1-1<原価縮減の原理>(コストダウンの原理・原則)

 原価が安くなることは極めて簡単な原理である。施工効率を上げて施工時間を短縮することがコストダウンの原理であり、これ以外に大幅なコストダウンの方法はないのである。材料についてコストダウンに関係あるもの(材料費に関する項目を参照)が多少あるが、コストの大幅な縮減の原理は、施工時間短縮のための新技術等の開発や施工時間を短縮するための工程管理にあるのである。以下その原理と理論的根拠について解説する。ただし、過去の日本的元請・下請関係の因習や契約内容についても改善しなければならない課題も多く、早急に解決しなければならない。

建設-1-2<原価と管理の概念>(原価の概念、管理の考え方の重要性)

 コストダウンの新しい手法を研究する場合、原価の概念を基本から正確に整理しなければならない。何故なら、実務で用いられている原価の概念に揺らぎがあるため、コストダウンのため本格的な原価管理導入を阻害している。そこで社内で用いている「原価の概念」と「原価管理の考え方」を全社的に厳密に確認しなければならない。これが原価管理の機能を発揮するための前提となるのである。

建設-1-3<管理可能費と管理不能費>(実行予算の欠点からの脱出)

 施工手法や現場の施工努力によって変動する原価を「管理可能費」といい、この管理可能費が原価管理の対象となる重要な概念である。すべての原価の中から「管理可能費」を分離することこそ、原価管理成功の成否を左右するのである。これに対して施工手法の改善等の努力によっても変動しない原価があり、これを「管理不能費」という。実行予算による原価管理システムの欠点は、管理可能費と管理不能費が予算という金額に混在していることである。したがって、新しい原価管理システムを導入する場合は、実行予算の欠点を十分に認識することか重要である。

建設-1-4<材料費と加工費の概念>(加工費という概念の重要性)

 生産物の加工という視点で原価を分類すると、材料費という原価とその他の原価に分解することができる。この材料費以外の原価を「加工費」というのである。材料費とは主として製品の本体の素材となるものであり、その素材を加工することによって製品が完成する。材料費以外のすべての費用は、加工のために費やす費用であり、これを「加工費」として認識することが原価管理に重要なポイントである。加工費は労務費、外注費(材料費を除く外注費)、経費から構成されている。この「加工費」がコストダウンの重要な項目である。

建設-1-5<材料費は原価管理の対象外>(材料費を原価管理から除く理由)

 材料費は、原則として現場においては原価管理の対象にはならない。何故なら、企業内(現場)の事情で材料費の金額が確定するのではなく、取引先、市場価格、納入時期、品質、支払条件等の種種の外部要因によって価格が決定されるからで、現場の施工努力に連動している原価とはならず、原価管理の対象にならないのである。

建設-1-6<材料費の管理可能費>(材料費の中にも管理の対象になるものがある)

 施工段階で発生する材料費で原価管理の対象となるものが多少は存在する。施工上のミスやロスによって発生した無駄な材料を消費した場合に生ずる材料費差異(予算材料費と実際材料費との差異)は、コストダウンに関係するものであり、この無駄な材料費は「管理可能費」(同用語解説参照)であるから、原価管理の対象にしなければならない。これに対して、市場価格の変動等から発生する材料費差異は、現場の施工とは関係なく発生する差異であり、これは現場において管理できない原価であるから、「管理不能費」(同用語解説参照)である。同じ「材料費差異」でも次元が違うものは、分析方法も違うことを留意すべきである。

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