159.現場の経営管理が近代化しない理由
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 6/8(水) 22:15:15  返信も含め全削除

1.現場責任者と原価管理
 古い原価管理の手法が、なかなか近代原価管理の手法に切り替らない。その理由に代理人制度とも深い関係をもっている。工事現場は、一つの企業体としての形態であり、管理体制からみても一企業体の経営管理をする必要がある。そのため一企業体としての最高責任者が要請され、その役目を果たすのが現場代理人である。しかしこの代理人制度の生い立ちは古く、江戸時代の徒弟制度における現場責任者である。しかし現代社会の社員としての雇用関係とは違い、丁稚奉公から一人前になって、独立する(のれんわけ)直前のトレーニング的な行為で、親方から工事金額が提示され、その金額によって請負う制度であった。企業側に立つ親方の視点で見ると、社内請負人に外注した状態と見るべきである。この制度は、その後、社内請負制度として引継がれており、社内請負人は、自分の努力によって獲得した利益はすべて自分に所属するため、この制度は本人の励みに作用し一定の成果が上がっている。この制度は原価管理の役割としても決して間違ってはいない。

2.古い原価管理の亡霊に取り付かれている
 当時の社内請負制度の現場責任者は、社員的な性格よりも下請企業の事業主としての性格が強いものであった。数十年前まで存在した社内請負制度は、社員として雇用契約で全責任を持たせ、報酬形態も給与計算ではなく請負計算方式をとっていた。したがって、現場責任者は、報酬形態はサラリーマンではなく、企業に所属しながら実質的に個人事業主の形態となっていた。この原型は江戸時代の暖簾(のれん)分けの直前の形態に酷似している。この形態は一種の独立した企業体を想定したもので、決して間違った制度ではないが、実行予算制度の課題は、原価管理の思想の一部に古い当時の残骸が残っており、近代的な工事管理の中に混在して亡霊のように作用している。そのため科学的係数管理をベースにした近代原価管理の手法に切替が出来ないのである。

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