161.不安定原価の存在と恐怖
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 6/23(木) 00:02:34  返信も含め全削除

1.原価の不安定さと原価に対する不安
 原価は比較的安定的に確認できる原価と、原価の発生が非常に不安定な原価が存在する。前回に解説した確定的原価とは、ここでいう安定原価を指している。また不安定な原価とは流動的に発生する原価を指している。このように原価を安定、不安定原価と二分するには理由がある。それは不安定原価の管理こそコストダウンの主目的であり、その効果も大きいからである。したがって、原価管理とは不安定原価の管理に重点を置いて実施することが重要になるのである。

2.不安定原価の存在と恐怖
 原価の発生がどのような状態の時に不安定になるかを検討してみたい。不安定原価の典型は、話が古いが江戸時代の宮大工の人件費を想定するとよい。匠の仕事として芸術的仕事をするが、当人は自分の人件費を意識した仕事はしないタイプが多い。気が乗れば寝食を忘れて仕事に没頭するが、気が乗らなければ一切仕事をしない。当時の仕事は出来型請負であるから経営学的採算は考える必要がないが、事例として考え方を整理することが重要である。この宮大工の人件費を現代的「人工(にんく)計算」の視点でみると、宮大工の人件費は眞に不安定原価であり、工事が完成するまで人件費が幾らかかるか想像できないことになる。これほど極端な不安定原価はないかもしれないが、現代の工事現場においても類似的行為は起きているのであって、決して江戸時代の話ではない。段取りの不手際や前工程との連携の拙さの影響を受け、また現場技術者の管理能力の低さの影響もあって、不安定原価は常に大きく変動しているのである。真の原価管理とは、この不安定原価の内容を科学的データによって分析し、コストを下げるノウハウを作る以外に解決する方法がないのである。このような不安定原価が存在することは恐怖であり、一般的に想像する以上に存在することを忘れてはならない。

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