建設産業研究部会

2001/10/17

建設-2<ISOを機能化する>ISOの失敗事例と再生化

建設-2-5 ISOはマニュアル文化圏の産物

(1) 多民族のマニュアル文化
 米国のような多民族の国は、人種・言語・宗教・文化・思想等が相違する多民族が集合して発展した国である。多民族では考え方や仕事の仕方にばらつきがあるのは当然である。そのため仕事の均一化が要求されたのも当然であり、その要求に答えるために発展したノウハウがマニュアルであり、近年の米国ではマニュアルによって作業することが仕事文化として定着している。日本でもコンビニエンスストアのチェーン店やレストランチェーン店等は、すべての仕事をマニュアル化して大発展を遂げている。ISOはこのマニュアルよる仕事文化を更に進化させ、ITと結び付いて発展しているのである。

(2) オールドビジネスの新生化
 マニュアルとIT化を融合することによって、オールドビジネスも新生化することができる。新しい経営思想によって、統合化された電子情報による経営管理によって、新しい業態に生まれ変わることができる。コンビニエンスストアやレストランチェーン店はその成功例といえるであろう。

(3) 進化を内包するISOの威力
 初期の段階から高度なマニュアルができるものではない。「現在の作業技術の記録」をベースに行動しながら改善し修正することによってマニュアル自体を進化発展させていかなければならない。この「進化させるシステムを内包化」したものがISOの制度である。更に事実の記録や原案作成者の知恵を越える関係者の知恵の結集として情報が蓄積され、マニュアルが進化を続けるのである。次に技術革新や技術進歩による社会の変化も常にマニュアルに取り込まれ、マニュアル自体が革新されるのである。ISOの思想はこのマニュアル進化論を内包しているシステムであることが重要であり、結果として威力を発揮するシステムであることを留意しなければならない。

(4) マニュアル文化圏の強みとIT化
 多民族圏の国では、現場の作業がマニュアルによって稼動することが作業文化となっていることは前述したが、これがマニュアル文化圏にとって大きな強みとなっている。しかも近年の技術革新や経済変革のスピードは、過去の歴史上で経験したことがないスピードがついており、品質保証や品質管理によって生産工程を固定化すること自体が危険である。したがって、品質を固定化したJIS制度等に頼ることは難しい時代になってきた。技術は刻々と進化するため、革新される新技術をいつでも生産過程に取り込みながら、信頼される生産管理システムの構築が必要となり、できるだけ流動的生産管理システムにしておかなければ、今日の技術革新時代に対応できないのである。この流動的生産管理システムを容易にしたのがIT化であり、ITによる管理システムがISO成功のポイントである。

(5) マニュアルで戦力化
 正社員族を少数化し、アルバイト・パート等の付加的労働力を常雇並の作業力まで高めて戦力化することは、マニュアルやISOという道具なしでは達成不可能である。如何に進化したマニュアルが威力を持っているかを認識すべきである。二重労働市場が進化する中で、その重要性は増すばかりである。

(6) 危機管理システムはマニュアルで
 航空機の運航には詳細なマニュアルがあってこそ、危機管理が適切に機能するのである。マニュアルの重要性を改めて認識すべきである。この危機管理システムもデジタル化することによって、変化の対応が容易となり危機管理の進化が迅速行われるのである。すべての行動が電子情報化したマニュアルによって成功することを留意しなければならない。更に、マニュアル文化圏では、二重労働市場化現象が進行中で、危機管理システムについてもマニュアル文化圏では、非常に馴染んでおり益々高度化している。

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