建設産業研究部会

2001/10/17

建設-2<ISOを機能化する>ISOの失敗事例と再生化

建設-2-7 ISOの導入の理由とその思想

(1) 日本人向け導入に工夫
 技術・技能・作業等を標準化しデジタル信号化することがISOが素早く進化するためである。それはペーパーによる情報に対して電子情報の修正が容易なためであり、マニュアルを進化させる環境をつくることに最も適しているのが電子情報である。しかし、前述したごとくマニュアルやISOは、多民族圏で発展したノウハウであり、日本人に定着しにくいシステムであることを十分に認識しておかなければならない。その上で日本人の歴史観・社会的背景・文化的思想を考慮し、ISOの本質を十分に見極め、更に日本人に馴染むように工夫し、全社員が納得して活用する価値を認識してから本格的に導入しなければならない。

(2) ISOの真価を全社的に理解を
 ISOは競争が激しくなった市場において、有利地位を確保するための意識が強すぎて、ISO取得自体が目的となっていることが現状である。ISO取得は入札等に有利に作用することは間違いないが、ISO取得だけを目的とするのではなく、現場で実際に活用する意思をもっと全社的に合意すべきである。

(3) ISOは企業の等身大で導入を
 技術・技能・作業等を優れた企業に発展させるため、現状の技能・技術等の向上を目的として進めるべきで、本格的VEや新しい生産方式等で成果を上げるためにも「自社の現実の行動」からスタートさせ、自社企業の現実に適したISOの基盤を確立する必要がある。他社が「たてまえで作ったISO」を社名だけを自社のサインに変えただけのISOでは、名刺に表示するだけのもので本物ではない。これでは現場で重荷となり日常的に活用する意思が希薄になるのも当然であり、形式的なISO制度が出来上がってしまうのである。導入当初に背伸びした状態の目標の設定では、ISOは決して有効に機能するものではない。自社企業の現実をベースに等身大のISOでスタートし、これを進化させながらISOを成功させなければならない。

(4) 個人所有の技術・技能等の財産
 従来の日本の技術・技能等は、個人の身についたものであるという意識があまりにも強かったのである。これは当然のことで個人が時間をかけ本人の努力によって技術・技能等に研きをかけて築き上げた個人の財産である。これも当然のことで今後とも続くであろうし、能力主義時代になるとますます重要なことである。しかし、近年の新市場主義経済のもとでは、技術・技能等財産が個人所有のままの状態では人材の能力の結集ができないし、これでは企業力は発揮できないし、国家的見地からみると大きな損害になることは間違いない。ISO導入時から全社的に、新しいISOの思想理解することが重要である。このようにISOは、新しい時代の流れとしての対応が迫られているのである。

(5) 早期に技術・技能等を企業内に蓄積を
 いずれにしても個人所有の技術・技能・作業方法等の情報を企業に蓄積して共有財産化することが、企業力を上げるための戦略として必要であることは間違いない。そのため電子情報化し、データベース化することにより強力な経営資源として企業内に技術・技能等を蓄積しなければならない。更に蓄積された電子情報を進化させることを日常化させなければならない。個人所有の技術・技能等をこのまま放置すると諸外国との技術・技能の企業内情報の蓄積量に差異が生じ、企業力の差は勿論のこと最終的には国力の差になって現れることが予想される。世界の中で現在の日本はすでにその傾向が現れ始めている。

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