建設産業研究部会

2001/9/24
改訂 2001/11/26

建設-1<工事原価の本質>
[原価縮減の原理]

建設-1-7<経理的な工事原価の分類>(経理的な原価概念の整理も重要である)

 原価を材料費労務費外注費経費の4分類する方法がある。これは、工事原価の内容を外部の利害関係者に報告する場合に用いる分類法で、完成工事原価報告書に表示されるものである。したがって、決算書を作成するために経理的表現として用いる方法である。この原価項目の分類法は、現場において施工管理に用いるものではなく、原価管理の道具として直接機能する分類ではない。しかし、経理担当者と技術者の接点となる原価の概念であり、この原価の概念も十分に研究しなければならない。

建設-1-8<外注費の概念>(外注費の概念とその処理法の難しさ)

 外注費は内容や処理の仕方によって、各種の異なる項目で表示される。協力会社に発注する外注費の中身が、(1)大部分が人件費である外注(労務外注という)の場合、(2)人件費に材料費込みで外注する場合、(3)材料費、労務費に施工上の管理費を含めたもので外注する場合等、外注内容が様々な状態であるが、経理的にはすべて外注費で処理される。また、元請企業が材料を提供する場合でも、元請の材料費として処理する場合もあれば、協力会社に付け替えして材料費を含めて外注費で処理する場合もある。このように外注費については種々の方法が認められているから,同種の現場であっても原価比較には限界があり、外注費を、原価比較や管理の道具として用いることが難しいのである。

建設-1-9<技術的な工種分類>(原価を技術的に用途分類すると複合費となる)

 現場では、原価を技術的な分類法として「工種別分類法」が用いられる。見積積算や実行予算が古くから技術者によってA工種・B工種・C工種等に工種別分類法が用いられてきた。この工種別原価分類の特色は、特定の工事で発生するすべての費用を工種別に集計する方法で、その内容は、材料費、労務費、外注費、経費の全てが工種別に集計されるため、原価内容が複合して集計されるので、これを「複合費」という。この工種別複合費は、施工段階を工種的用途分類でもあり、「用途別分類法」ともいう。見積計算実行予算法に用いられる表示形式である。

建設-1-10<施工方法と原価項目(各種の施工方法によって表示項目が相違する)

 原価は、同じ工種の施工であっても、施工内容によって処理項目が変わることを注意しなければならない。工種名が「掘削作業」の場合でも、自社雇用の作業員が施工すれば労務費で処理されるし、協力会社に掘削作業を外注すれば外注費と処理され、自社所有の掘削機械で施工すれば、機械等経費という経費で処理される。したがって、同種の工事であっても施工方法によっては処理項目が変わるのである。

建設-1-11<実行予算で目標原価を設定>(実行予算の弱点と欠陥を解明する)

 実行予算は、標準原価の一種であり、目標原価を設定する重要な役割を持っている。その意味で実行予算の設定は意義があるが、実行予算は金額的設定の思想が強く、日々変化する現場の状況を金額による表示だけでは、高度な判断をするための科学的資料としては不備である。主として予算消化との道具して機能するが、本格的コストダウンの道具としては機能するとは言えない。また、次の工事に対するコストダウンにつながる資料の提供としても無力に近いし、実行予算制度が標準原価制度の思想を引き継いでいない。この点が実行予算制度の大欠陥であり弱点である。この点を解明することが大幅なコストダウンに役立つのである。

建設-1-12<実行予算は金額管理の限界>(実行予算は金額管理の弱点を持っている)

 近年まで経営管理の道具として金額(予算)を用いてきた。何故であろうか。すべての経営事象を共通の尺度として貨幣評価(金額)が重要な役割を果たしているのである。この金額表示の道具がなければ、実行予算が道具として機能しないのである。これを貨幣評価の原則という。材料費、労務費、外注費、経費のすべてを共通概念として貨幣表示が経営管理の重要な道具として機能してきたのである。しかし、近年の超競争市場経済では、金額のみによって管理する方法は時代遅れとなり、予算という金額以上に高度な経営管理の道具が求められ、金額と合わせて数量管理の道具が要求されるに至ったのである。

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