社会科学研究部会

2001/9/24

社会-1<社会構造のビッグバン>

社会-1-1<テリトリー文化の生成と崩壊>(エリア文化の崩壊によって新しい現象が起きている)

 原始時代の人類は、自然界の脅威から身を守るために集団化して防衛をせざるを得なかったのである。集団ができると集団としてのテリトリー(集団活動の適切な範囲)が出来上がり、その集団はテリトリー内で独自の文化を作り上げたのである。他の動物界の行動も同様でほとんどの動物は、居心地の良いテリトリー文化をもっている。このように動物には限定されたエリア内で行動する習性をもっている。人類も他の動物と同様に限られたエリアの中でのテリトリー文化エリア文化という)に馴染んでいたのである。これが20世紀末期に起きた地球レベルのグローバル化現象は、社会構造の変化と言う概念では理解できるものではない。これは社会構造のビッグバンと言うべきである。このビッグバンによってエリアが破壊されたのである。人類が数万年(類人猿前を入れるともっと以前から)かけて築き上げたエリア文化が一瞬にして崩壊したのである。

社会-1-2<エリア文化崩壊の原因>(情報化社会は新しいマネジメント能力が求められている)

 近代になってエリア文化が崩壊した原因は、情報化社会に起因している。人間は情報を入手するとその情報によって行動する習性を持っている。その結果個人行動になって現れる。これを情報化社会による個人主義者化と呼んでいる。閉鎖社会の中で独裁者によって情報コントロールされた時代は、情報によって集団が踊らされた時代もあった。独裁者が権力を握った時代の背景は、閉鎖型社会と情報発信のシステムがポイントである。しかし、近年の新聞、雑誌、電話、FAX、テレビ、IT化による情報化社会は、過去の閉鎖社会と比較することが出来ない社会構造に変化したのである。更に、IT機器の研究は、大量の情報をリアルタイムに入手できる環境に進化させている。現在のような情報入手の自由な時代は過去には存在しなかったのである。したがって、過去のような独裁者が存在する余地はなく、情報化社会を前提とした新しい時代のリーダーが求められている

社会-1-3<エリア文化の後遺症>(地球レベルの異文化混在型社会の現実)

 情報化社会は人類にとって居心地が良い面と人類に馴染まない面をもっている。小さなエリアをもった文化圏(小部落のような)の方が、居心地のよい集団化がしやすく、合意された習慣・慣習が規範として定着する。エリア内は、平和で長老も大事にされ、人類が本能的に持っている居心地の良いテリトリー社会である。そのエリア内文化は、20世紀末期ころまでは存在した。しかし、今日のようにビッグバンによってエリアが破壊されると、他のエリア文化の大きな影響を受け、新しい摩擦が引き起こされる時代になり、居心地の良かった文化も破壊され、修正をせざるを得ない状況になったのである。洋服や道具のような外見的な影響は、利便性の点からも良い点であろう。しかし、精神的な内面的な異文化の影響は、人類にとって心地よいものとは思えない。しかし今日の地球は異文化混在型社会となったのであり、後戻りをすることができないのである。

社会-1-4<エリア型学問体系の見直し>(エリア崩壊後の経済学や経営学に新しい視点が必要である)

 近年、エリアを前提として経済学や経済政策の修正が必要となった。エリア型経営学が通用しなくなったのも当然である。ビッグバンによってエリア型市場経済が破壊されたのであるから、ビジネス界も新しい市場(エリア崩壊後の市場)で通用する経営システムに切り替えなければならない。今までの学問体系はエリアを前提とした論理展開であり、この点をビッグバン以後の状況により学問体系を見直さなければならない。それには現在の経済的社会事象を観察し適格に分析しなければならない。エリアが鮮明に認識できた時代の学問的体系の変更は難しく、少々理論不足である。

社会-1-5<エリア経済と人脈ビジネス>(人脈パワーと市場パワーの戦い)

 エリア型ビジネス時代は、よそ者にとって新エリアに新規参入することが難しく、そのため接点となる人脈を作ることがエリアビジネスの戦略であった。したがって、人脈関係を維持するための行動も必要で、中元・歳暮・接待等の人脈維持コストも膨大に費やしたのである。しかし、社会構造のビッグバンによってエリア文化が崩壊すると人脈取引も崩壊した。人脈取引の威力を越えた市場型ビジネスパワーが強くなったのである。ビジネスが人脈によって成立した時代には人脈自体が優先し、コストは軽視されたが、エリアが崩壊した市場では、良い品質で安い製品を市場が判定する社会である。一体化した世界の巨大市場が従来の古い人脈取引を排除し、本格的市場論理の取引が人脈ビジネスパワーを越えたのである。

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