社会科学研究部会

2001/9/24

社会-1<社会構造のビッグバン>

社会-1-6<エリア文化時代の商社活動>

 エリア文化が鮮明な(エリアを国としてみる)時代は、物価や賃金、所得に格差があっても他のエリアには影響を与えなかったが、社会構造のビッグバンによって、製品の品質や価格、賃金体系に大きな影響を与えたのである。ビッグバン以前は、他のエリアに影響を与えることが弱かったために、エリア間で物価等の価格差、賃金格差等が生じていても問題にならなかったのである。むしろこの格差がビジネスチャンスであったのであり、商社がエリア間の格差を利用して大きな利益をあげていたのである。しかし、今日のように流通経路に多くのバイパスができると、従来どおりの商社ビジネスができなくなったのである。世界の市場が一体化して巨大市場が出来上がった証拠である。

社会-1-7<エリア崩壊後の新市場現象>(エリア型市場経済と相違する世界巨大市場の動き)

 エリアが鮮明に存在した時代の市場経済(これをエリア型市場経済という)時代は、エリア内で一物一価の法則が機能していたが、ビッグバン後は、一物一価の法則が地球レベルで機能しており、世界市場が一体化した巨大市場で動いていることを示している。エリア市場経済の時代の経済現象とエリア崩壊後の市場経済が、相違していることを認識しなければならない。したがって、仮に日本がインフレ方向に動いたとしても、簡単にリアルタイムで隣国から安い製品が流れ込んで市場価格を押し下げる。これは従来のデフレ現象とは違うのである。このようにエリア経済時代の過剰在庫等からくるデフレ現象の定義とはかなり相違しているのである。

社会-1-8<エリア文化時代の賃金体系>(エリア型労働市場から地球規模に広がりを見せている)

 エリア文化圏が鮮明な時代には、エリアごとの賃金体系や賃率(時間当りの賃金)が独自に形成されていたが、社会構造のビッグバンによって労働界も一変したのである。一体化した世界巨大市場の中でのビジネスは、当然賃金にも影響を与え、日本の賃金だけが高いことが許されないのである。当然市場経済は、労働市場までも地球レベルで平準化がさせているのである。エリア内の賃金を高めに設定すると、当然競争力を失い安い賃金エリアへ工場移転が始まることは周知の事実である。新市場経済(エリアが崩壊した状態の市場経済をいう)は、地球規模で公平公正の原理が機能する市場経済である。そのため、エリア別恩典は存在しないのである。

社会-1-9<21世紀への大きな河>(この大河を渡りビジネスチャンスにできるか)

 20世紀末期に起きた社会構造のビッグバンの特色は、情報化社会が先行し大きな流動化を引き起こし、エリアの概念を崩壊させたことであろう。近年の変化スピードは、革命と言われるスピードに該当する。そこで問題となることは、人類の思想や文化が臨界点を越えた変化のスピードについて行けない点にある。この点を「大きな河」として表現すると、現代社会の市場経済の実態は、すでに大きな河の対岸にあり、特にビジネス行動は対岸で行われている。残念ながら日本人の思想や意識、行動が、いまだに河を渡っていないのが現状である。早く渡ることが必要であり、ビジネスチャンスはこの点にある。

社会-1-10<20世紀までのエリア社会の特色>(21世紀の新しい未知の世界を体験しょう)

 20世紀までの特色は、人類が本能的にもっているテリトリー文化を維持してきたことである。この時代は、行動範囲がエリア内に限定されていた特色を持っている。したがって、エリア内での行動文化は類似するのである。その文化は規範として機能果たし、時として掟としての役割を果してエリア文化を作り上げたのである。このエリアがテリトリーとして鮮明な時代には、外部からの進入者もその掟に従わなければならなかったのである。ビジネス行動も掟に従った行動となり、市場は、弱競争市場となり仁義なき戦いとはならないし、共生論や住み分け論を中心とした弱競争の論理となるのである。しかし、本来の市場論理は、良い意味での仁義なき戦いを言うのである。21世紀に入った今日は、エリア文化が崩壊した大きな河の対岸の社会であり、激しい超競争社会のため、住み良い社会ではないかもしれない。しかし、決して戻ることは有り得ないことを認識すべきである。

社会-1-11<集団主義社会の生成と崩壊>(垂直型人的組織から水平型人的システムへ)

 テリトリーが小規模であれば、統制が取れた集団主義社会を形成する。同じ釜の飯を食った仲間として信頼される仲間的集団構造の社会を形成する。他のエリアの脅威を感ずれば、信頼する仲間が必要であり集団化して対抗する。学閥、派閥、県人会等少しの接点を求めて集団化し自己防衛する。集団化すると集団の統制が必要になり、人的縦型の統制組織が生まれるのであり、企業の人的ピラミット型組織も同じである。しかし、近年の情報化による流動化や個人主義化の波は止まらない。更に、IT化による新しい水平の人間関係は、この集団主義社会に大きな影響を与え、集団の統制が難しくなってきたのである。ここにも新しい水平型の人間関係や新しい人的スシステムの研究が要求される時代がきたのである。

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